企業には、従業員のために快適かつ安全な職場づくりをする義務があります。ここでは、企業にどんな義務が課されているのか、その内容と、行うべき対策についてご紹介します。
労働安全衛生法は、①労災を防止して労働者の安全と健康を確保すること、そして②快適な職場環境の形成を促進することを目的に作られた法律です。
この法律では、快適な職場環境を整えるために、会社など事業者に次のような義務を課しています。
すべて努力義務のため、規定に違反しても、刑事罰を受けたり罰金などを支払ったりすることはありません。ただし、熱中症は業務上の疾病と規定されるため、万が一従業員が熱中症で休業した場合は報告をしなくてはなりません。
以下の図は、労働契約法第5条の安全配慮義務を違反したと判断される基準です。
では「快適な環境」とはどの程度の温度環境なのでしょうか。労働安全衛生法に基づき、厚生労働省が定めた「快適職場指針」(※1)では、
「屋内作業場においては、作業の態様、季節等に応じて温度、湿度等の温熱条件を適切な状態に保つこと。また、屋外作業場については、夏季及び冬季における外気温等の影響を緩和するための措置を講ずることが望ましいこと。」
と規定されています。
そしてその「温熱条件」については、同「事務所衛生基準規則」(※2)で
「事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。」
と規定しています。
つまり、作業環境の温度目安は、年間を通して気温が17℃以上28℃以下、湿度が40%以上70%以下というのが基準になっています。ただし、上記の規定は空調設備がある事務所に対するものなので、エアコンがない職場では対象外です。
参照元:中央労働災害防止協会「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」
(http://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-21/hor1-21-1-1-0.htm)
参照元:事務所衛生基準規則
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000043_20221201_503M60000100188)
注意したいのは、どんなに法令の基準を満たしていても、「暑い」「寒い」は個人の感じ方によって違うということ。温度が低くても、湿度が上がれば暑く感じますし、反対に、湿度が下がれば寒く感じます。温度だけでなく、湿度も確認して対策を行いましょう。
その上で、従業員それぞれの意見を聞くことも忘れずに。一人ひとりの生産性が「暑さ」「寒さ」のせいで低下しているのであれば、対策を行うことで改善が期待できるかもしれません。
企業には、従業員が快適かつ安全に作業ができるような環境を整える義務があります。「努力義務」のため、違反したからといって刑事罰を受けたり罰金など支払ったりすることはありませんが、万が一熱中症被害を出してしまった場合は、社会的な信用を失う・損害賠償を請求されるなど大きな損失となる恐れがあります。適切な対応を行い、工場での熱中症被害を防ぎましょう。
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